自然観察では、写真だけでは伝わりにくい気付きもあれば、言葉や図より写真で残しやすい細部もあります。短いメモや図は紙に書き、写真や音、時刻はスマートフォンに残すという分担なら、どちらか一方に決めずに両方の利点を使えます。

紙は電池を使わない反面、写真や音声を直接保存できず、濡れや紛失への備えも大切です。スマートフォンでは、電池切れや雨に加え、記録を公開するときの位置情報にも気を配りましょう。

公園のベンチで片手にスマートフォン、もう片方の手に鉛筆を持ち、方眼ノートへ記録する様子
イメージ例:写真はスマートフォンに保存し、その場の気付きは紙に書く。

紙には、気付いた特徴や簡単な図を残す

小さな紙のノートに天候や葉の形を手書きする様子
使用例:見えた形や動きを、短い言葉や線で書き留める。

紙のノートは、対象を見ながら短い言葉や線を書きたいときに使いやすい道具です。通知や画面の切り替えがなく、電池残量も気にせず使えます。

名前が分からなくても、葉のつき方、動いた方向、周囲の環境なら簡単な図にできます。書き直す前の線を残せば、その場で何に迷ったのかも後から読み返せます。

雨や汗で紙が濡れないよう、ノートと筆記具は袋に入れて持ち歩きましょう。立ったまま書くときは、先に足元の安全を確かめてください。

スマートフォンには、写真や音を残す

園路からスマートフォンで身近な植物を撮影する様子
使用例:植物の色や周囲の様子を、園路から写真に残す。

写真、動画、音、時刻をまとめて残せるのが、スマートフォンの利点です。対象の全体、細部、周囲の環境を分けて撮っておくと、帰宅後にその場所の様子を思い出しやすくなります。複数の角度から見た形を残す場合も、紙に細部を描き続けるより短時間で済むことがあります。

ただし、撮影や通信を続ければ電池を使います。雨や落下、画面の見づらさ、通信圏外も考え、帰り道を調べる手段や緊急連絡の手段を、スマートフォンだけに頼らないようにしてください。

残したい内容で、紙とスマートフォンを使い分ける

紙のノート、鉛筆、スマートフォンを一緒に使う準備
使用例:メモを書くノートと、写真を撮るスマートフォンを用意する。

何を記録したいかが決まれば、どちらを使うかも選びやすくなります。記録できる内容と、電池や公開時の扱いを比べておきましょう。

比べる点紙のノートスマートフォン
気付いた特徴短い言葉や矢印で書きやすい入力中に対象から目が離れやすい
形や配置簡単な図で関係を残せる写真で外見を正確に残しやすい
動きや音言葉で要点を残す動画や録音で残せる
日時自分で書く撮影データに記録できる
電池切れ影響を受けない撮影と通信ができなくなる
公開時の位置情報自分で書いた範囲だけ残る写真や投稿設定を確かめる

短い散歩なら、紙に日時、天候、環境、見たものを書き、スマートフォンで対象の全体と細部を一枚ずつ撮る方法から始められます。

記録を公開する前に、場所がどこまで伝わるかを見る

自然写真を共有する前にスマートフォンの情報を確認する人
イメージ例:写真や投稿の位置情報を、公開前に確かめる。

観察記録を外部サービスに投稿するときは、位置情報の公開範囲を確かめてください。iNaturalistでは、観察地点の公開範囲をopen、obscured、privateから選べます。

ただし、位置をぼかす設定だけで場所が分からなくなるとは限りません。写真に写った目印、説明文、同じ時刻や近い場所で公開した別の観察記録から、位置を推測されることがあります。

希少種や採集圧を受けやすい生きものについては、公開する本文や写真に詳しい場所を残さず、投稿先の設定だけに頼らないようにしましょう。自宅付近など、個人の生活圏が分かる記録にも同じ注意を払ってください。

紙のメモと写真を、後で照合できるようにする

同じ植物のノート記録とスマートフォン写真を照らし合わせる様子
使用例:手書きメモと写真を照らし合わせ、一件の観察としてまとめる。

紙とスマートフォンを併用するなら、どの写真がどのメモに対応するかを残しておきましょう。観察中から次の順に記録すると、帰宅後に照合しやすくなります。

  1. 紙に日付、時刻、天候、環境を書く。
  2. 対象の全体、細部、周囲の環境を撮る。
  3. 紙に写真の枚数と、写真だけでは分かりにくい動きや匂いを書く。
  4. 帰宅後に写真を整理し、分からなかった点を調べる。

ノートの見開きを一件の観察に使うなら、上端に日付、時刻、天候、左ページに形・色・動きのメモ、右ページに周囲の環境と分からなかった点を置く方法があります。書く場所を決めておくと、読み返す位置も決まります。

撮影直後には、「写真1〜3、10時18分、全体、葉、周囲」のように、撮影順と時刻を紙に書き添えます。帰宅後、スマートフォンの撮影時刻と照らし合わせられます。ページ番号のないノートでは、表紙から数えた見開き番号も一緒に書いておきましょう。

種類を確定できなければ、候補名か「種類は不明」と残してください。記録のために対象を採ったり動かしたりせず、その場で見られる範囲を記録します。

机のない場所で書くなら、表紙の硬さも選ぶ手がかりになる

園路で手のひらサイズのノートへ立ったまま書く人
使用例:小さなノートを片手で支え、園路で立ち止まって書く。

持ち歩くノートは、大きさ、表紙の硬さ、紙面の形式で比べます。立ったまま短いメモを書くのか、大きな図や詳しい記録を残すのかで、使いやすいノートは変わります。

コクヨ 測量野帳 SKETCH BOOK セ-Y3は、外寸165×95×6mm、40枚の方眼ノートです。硬い表紙が支えになるため、机がない場所でも短い記録を書けます。

一方、写真を貼ったり、大きな図や一日分の詳しい記録を残したりするなら、大きめのノートが使いやすいでしょう。購入前には、普段のバッグに入るか、手袋をしたまま開けるか、使う筆記具で裏写りしないかも確かめておくと安心です。

まずは、小さなノートと鉛筆、充電したスマートフォンから

小さなノート、鉛筆、スマートフォン、収納袋を並べた様子
使用例:ノート、鉛筆、スマートフォンを、収納袋と一緒に用意する。

最初から記録方法を増やしすぎると、観察よりも道具の操作に時間を使ってしまいます。記録用の道具は、小さなノート、鉛筆、充電したスマートフォンの三つから始め、困った点が見つかったときに防水袋や予備電源を加えてみましょう。

出かける前には、記録道具以外の準備も忘れずに。自然観察を始める最低限の道具で、服装や飲み物を含めた持ち物全体を確かめられます。