自然観察のノートを開いても、生きものの名前が分からず、何を書けばよいか迷うことがあります。そんなときは、名前より先に、見えた形や色、動きを残してみてください。
日時、天候、周囲の環境も添えておけば、帰宅後に図鑑や写真と照らし合わせる手がかりになります。すべてを詳しく書く必要はありません。その場でしか分からないことを短く残し、分からなかった部分は次の観察につなげましょう。
最初は、いつ、どんな場所で見たかを書く
ページの最初には、あとからその場面を思い出せるよう、日時と周囲の様子を書いておきます。文章にまとめなくても、次の項目を短く並べればかまいません。
- 日付と時刻
- 晴れ、曇り、雨などの天候
- 風の強さ
- 日なたか日陰か
- 公園、草地、水辺、林など周囲の環境
場所は、自分が分かる範囲で残しましょう。公開する予定の記録には、希少種の詳しい位置や、自宅付近だと分かる情報を書き込まないほうが安全です。
名前が分からなくても、形や大きさは残せる
名前を一つに決めようとする前に、実際に見えた特徴を書きましょう。色は光の当たり方や見る角度で印象が変わるため、形、大きさ、模様、数も一緒に残すと、あとで比べる材料になります。
| 見つけたもの | 見える範囲で書いておきたい特徴 |
|---|---|
| 鳥 | 体の大きさ、くちばしの形、翼や尾の模様 |
| 植物 | 葉の形、つき方、縁の様子、茎や幹の色 |
| 昆虫 | 体の形、脚や触角、翅の有無、動き方 |
表の項目を埋めるために、対象へ触れたり、動かしたりする必要はありません。見えなかった部分や分からない部分は、空欄のままにしておいてください。
写真に残りにくい動きや音を、短い言葉で補う
写真だけでは、動きの速さや音の間隔まで残せない場合があります。「枝から地面へ移った」「同じ音を数回繰り返した」「水面近くを直線に飛んだ」のように、何をしていたかを短く書き添えてみましょう。
音をぴったりの文字に置き換えられなくても、高い音か低い音か、短い音か、繰り返していたかを残せば比較できます。聞こえた音を記録するために、鳴き声を再生して生きものを呼び寄せることはしないでください。その場で聞こえた音だけを残します。
生きものの周りにあったものも書いておく
同じ生きものでも、見つかる場所や行動は季節や環境によって変わります。対象だけでなく、その周りの様子も残しておくと、別の日や別の場所の記録と比べられます。
水辺からの距離、草や木の高さ、日なたと日陰、地面の乾き方や湿り方を見てみてください。人通りや管理作業の様子も、周囲の環境を思い出す手がかりになります。
詳しい住所を書かなくても、「池に近い日陰の園路」「刈られた草地の縁」のように残せます。何が近くにあり、どんな環境だったかが分かる言葉を選びましょう。
絵は輪郭だけでもよい。気づいたところに矢印を添える
形を正確に描き上げようとしなくてもかまいません。葉や体の輪郭を一本の線で描き、気づいた部分へ矢印を引くだけでも記録になります。
矢印の先に「白い線」「先が丸い」「二つに分かれる」と短く添えれば、写真では目立たなかった特徴も残せます。動いた方向や、複数の対象がどこにいたかという位置関係を示すときにも、矢印が使えます。
一件分の記入例
日時と環境に続けて、見えた特徴、動き、分からなかったことを並べると、次のように書けます。
8月6日 8時30分、晴れ、弱い風
公園の池に近い日陰の園路。
手のひらより小さい鳥。 背は灰色に見え、目の近くに白い部分。
低い枝から地面へ移り、落ち葉の間を数回つついた。
名前は分からない。 尾の長さと腹の色を次回に見る。
この例では名前を決めていませんが、見えたことと、まだ分からないことが分かれています。次回は尾の長さと腹の色に注目する、という続きも残せます。
帰宅後に調べたことは、現地のメモと分けて追記する
家で図鑑を開き、名前の候補が見つかっても、現地で書いたメモは消さずに残しましょう。別の色の筆記具や追記欄を使い、「図鑑で候補を確認」「写真では模様が見えない」と調べた内容を書き足します。
現地で見たことと、あとから知ったことを分けておけば、どこまでを実際に観察できたのかが分かります。一つに絞れない場合は、「種類は不明」「似た候補が二つ」と残してかまいません。分からなかった部分を埋めるために、元の記録を書き換える必要はありません。
紙のメモに、写真や音の記録を組み合わせる
紙には短い言葉や図を残し、スマートフォンには写真、動画、音、時刻を保存できます。どちらか一方に決めず、それぞれに残しやすい記録を組み合わせてもよいでしょう。
持ち歩き方を考えたい場合は、紙の観察ノートとスマートフォンの使い分けで、電池、雨、位置情報も含めた違いを比べられます。
撮影した写真を公開する前には、位置情報の設定だけでなく、背景に写った目印や説明文も見直してください。場所の情報は、設定以外の部分からも伝わることがあります。
最後に、次に見たいことを一つだけ書く
ページの終わりには、「葉の裏を見る」「同じ時刻にもう一度聞く」「水辺から離れた場所と比べる」のように、次にしたい観察を一つ書いておきましょう。
そのために立入禁止の場所へ入る、巣へ近づく、生きものを採るといった行動は、観察項目にしないでください。対象へ触れたり動かしたりせず、安全に見られる範囲で考えます。
次に出かける前にその一行を読み返せば、何に注目したかったかを思い出せます。数行の記録でも、次に確かめたいことが残っていれば、同じ場所を見直す手がかりになります。